東京高等裁判所 平成4年(行ケ)225号 判決
アメリカ合衆国
ニューヨーク、ニューヨーク、アヴェニュー オブ ジ アメリカズ 32
原告
エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション
代表者
ジョーズ エス インディグ
訴訟代理人弁理士
岡部正夫
同
加藤伸晃
東京都千代田区霞が関三丁目4番3号
被告
特許庁長官 清川佑二
指定代理人
渡邉順之
同
花岡明子
同
伊藤三男
大阪市中央区北浜四丁目5番33号
被告補助参加人
住友電気工業株式会社
代表者代表取締役
倉内憲孝
東京都新宿区西新宿三丁目19番2号
同
日本電信電話株式会社
代表者代表取締役
児島仁
東京都千代田区丸の内二丁目6番1号
同
古河電気工業株式会社
代表者代表取締役
友松建吾
東京都江東区木場1丁目5番1号
同
株式会社フジクラ
代表者代表取締役
田中重信
補助参加人4名訴訟代理人弁理士
久保田穰
同
増井和夫
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告のための附加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
1 原告
特許庁が、昭和59年審判第22282号事件について、平成4年6月18日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文1、2項と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
ウエスターン エレクトリツク カムパニー インコーポレーテツド(後に、エーティーアンドティーテクノロジーズ インコーポレーテッドと名称変更)は、1975年10月23日の米国特許出願第625318号に基づく優先権を主張して、昭和51年10月21日、名称を「光ファイバの製造方法」とする発明(昭和60年1月9日付け手続補正書により、発明の名称を「光ファイバの形成方法」と訂正、以下「本願発明」という。)につき特許出願をした(特願昭51-125576号)が、昭和59年9月11日拒絶査定を受けたので、同年12月10日、これに対する不服の審判の請求をし、同請求は、同年審判第22282号事件として、特許庁に係属した。
原告(旧名称、アメリカン テレフォン アンド テレグラフ カムパニー)は、上記出願人から本願の特許を受ける権利の譲渡を受け、昭和60年12月21日、その旨を特許庁長官に届出た。
特許庁は、同事件につき、昭和61年1月14日、「本1件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしたが、同審決は、東京高等裁判所昭和61年(行ケ)第144号審決取消請求事件平成2年3月29日判決により、取り消された。
特許庁は、再度審理の結果、平成4年6月18日、「本件審判の請求は、成り立たない」との審決をし、その謄本は、同年8月5日、原告に送達された。
2 本願発明の要旨
部材を軸の回りに回転させる工程と;
バーナーの炎中で起きる化学反応によって生成されたガラスからなる霧状原料を該回転している部材に向けて該霧状原料を収集し、該霧状原料からなる体部を形成する工程と;
該収集された霧状原料を固化して無孔質ガラス体を形成する工程と;
該無孔質体から光ファイバを引き抜く工程と;
を含む光ファイバの形成方法において、
該バーナーと収集面との間の距離を該収集された該霧状原料の自己支持的棒状スート体が形成されるように維持しながら、該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集することを特徴とする光ファイバの形成方法。
3 審決の理由
審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願発明は、本願出願日前に出願され本願出願日後に特開昭51-71316号として公開された特願昭49-145338号の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「引用例」といい、その発明を「引用例発明」という。)に記載された発明と同一であるから、特許法29条の2第1項の規定により特許を受けることができないとした。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、本願発明の要旨、引用例の記載事項の各認定は認め、本願発明と引用例発明の技術の対比、検討については、本願発明の「該バーナーと収集面との間の距離を該収集された該霧状原料の自己支持的棒状スート体が形成されるように維持しながら、該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集する」との特徴は、引用例発明でも、その実施に際し、当然に備え又は採られるものとし、作用効果上も異なるものとは認められないとした点(審決書7頁3行~8頁1行)を争う。
審決は、本願発明の上記特徴について、引用例には、それを技術的手段として具体化する可否についての必要な裏付けを欠いた、発明未完成のままの記述があるにすぎないのに、これが完成された発明として記載されているものと誤認した結果、誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由(引用例発明の技術内容の誤認)
(1) 引用例には、審決認定のとおり(審決書3頁13行~4頁18行)、「光伝送用ガラスの製造方法」に関し、次の〈1〉~〈3〉の記載がある。
〈1〉 「前者の一例を第1図に示す。基板(1)を矢印の如く回転しながら所定の速度で降下させる。
そして(B1、B2、B3・・・・・)のように複数個の高周波プラズマトーチ又は酸水素バーナー(3)を並べておき、その炎の中央部分に高温反応してガラスとなりうる混合ガス、例えばSi又は他の元素のハロゲン化物、水素化物、有機化合物と酸素のガス混合物をB1、B2・・・・・に応じて組成をかえて送り込むと高温反応によりSiO2又は他の酸化物を含有するSiO2のガラスがB1、B2B3・・・に応じて出来、それらガラスが基板(1)上に積層しガラス塊(2)となる。」(甲第4号証2頁左上欄6~17行)
〈2〉 「その他上記の説明ではガラス体を作る例を示したが、これはまず始めにガラス粉末体を作り次にこれを適当な雰囲気、加熱温度、時間で焼結してガラス体としてもよい。」(同2頁左下欄13~16行)
〈3〉「このガラス塊(2)は次にさらに高温、例えば2000℃の炉内に入れて溶融延伸してフアイバーを作ることが出来る。」(同2頁右上欄13~15行)
「さらに積層後直紡糸するという形に連続工程でフアイバーを作ることが出来る。」(同2頁左下欄17~18行)
(2) しかし、審決が、引用例で「まず始めにガラス粉末体を作り次にこれを適当な雰囲気、加熱温度、時間で焼結してガラス体とし」という酸水素バーナーを用いた粉末体形成の態様を採る場合に、上記〈1〉の記載(第1図を含む。)から、「引用例でも、本願発明の場合と同じく、『該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集する』ようになっており、またその基板上には、収集された霧状原料の棒状スート体が、しかも自己支持的に、形成されるものと認められる。そしてこの場合、バーナーと収集面との間の距離をそれが形成されるように維持すべきことは当業者には自明のことであるから、本願発明でいう『該バーナーと収集面との間の距離を該収集された該霧状原料の自己支持的棒状スート体が形成されるように維持しながら、』の点は、引用例でも、その実施に際し、当然に備え又は採られるものと認められる。」(審決書7頁5~17行)とした点は、以下に述べるとおり、誤りである。
本願特許請求の範囲前段部「部材を軸の回りに・・・光ファイバの形成方法において」の内容は、従来技術(公知事項)として述べられているもので、その従来技術は、本願第1図に示すような心棒上の半径方向へのスート堆積法である。そして、後段部「該バーナーと収集面との間の・・・特徴とする」が、本願発明を従来技術から区別するための特徴事項である。
すなわち、本願発明の特徴事項に係る「収集された霧状原料の自己支持的棒状スート体」という内容は、本願明細書の詳細な説明の具体的な実施例によって裏付けられているような軸方向にガラス原料を堆積して形成する自己支持的スート体であって、後の固化工程で支持体がなくとも歪みなくそして気泡の残留しない透明ガラス体となりえて、一応光ファイバと称されるものが製造できると認められる自己支持的棒状スート体ということである。
(3) これに対し、引用例に記載された技術内容を検討すると、始めに酸水素バーナーを用いた粉末体形成の態様を採り、その後自己支持的棒状スート体を形成するという審決の認定する技術内容は、引用例が実施例として記載するノズルN1~N4からのガラス原料ガスを高周波プラズマトーチ(3)により加熱された基板(1)ないしガラス塊(2)の表面に吹き付け、その高温加熱された表面上での化学反応で生成されたガラスを透明ガラス塊(2)として形成するという方法とは、化学的、物理的に全く異なる手法であると同時に、引用例発明の出願日にあって従来技術からその現実性が直ちに予測され得た技法ではなかったものである。
まず、引用例においてガラス微粒子体に言及する直接の記載は、前示〈2〉の「その他上記の説明ではガラス体を作る例を示したが、これはまず始めにガラス粉末体を作り次にこれを適当な雰囲気、加熱温度、時間で焼結してガラス体としてもよい。」との記載だけであり、この記載の教示するものは、従来技術を前提として半径方向に屈折率分布を得る点では透明ガラス体でもガラス微粒子体でも同じであるということ以上ではなく、軸方向堆積によるガラス微粒子体形成自体の具体化の可否の検討結果を何ら示すものではない。
また、軸方向にガラス微粒子を成長させる手法は、光ファイバ製造方法として当時の周知技術からは当然にその具体化が予定されたものではなかった。一旦ガラス微粒子体を形成するという上位概念自体は当時の周知技術であるとしても、その下位概念たる軸方向にガラス微粒子体を堆積させて円柱状ガラス微粒子体を形成する手法については、光ファイバの製造方法としては、周知慣用の手段とはいえず、それ自体具体化の可否の検討を必要としたものであり、それを経て始めて技術思想となりうるのである。
すなわち、堆積体表面温度を適宜設定することでガラス粉末体の態様も透明ガラス体の態様も採用できることは周知であったとしても、それは堆積手法等にかかわりなく一般的・原理上ガラス粉末体ができるということだけである。本件で問題とされるべきは、光ファイバという一定の機能を有する装置の製造法であって、軸方向堆積によって光ファイバ用自己支持的棒状スート体を形成するという固有の手法に関することである。被告が堆積体表面温度を低くすればガラス粉末体が形成されると主張するのも、原理的にはそれで軸方向堆積の場合であっても何らかのガラス粉末体の塊ができるというだけのことであって、それによってどのような程度の光ファイバが製造できるかという具体的結果までを予測させて一つの技術手段として認識させうるものではない。
したがって、酸水素バーナーを用いた粉末体形成の態様を採る場合の具体的記述に関し、技法の全く異なる引用例の実施例をもってそれに代えることはできないし、当時の周知技術に照らしてみても、従来技術をもってそれに代えることができるものではない。すなわち、引用例において、酸水素バーナーを用いた粉末体形成の態様を採る場合、軸方向堆積によって光ファイバ用自己支持的棒状スート体を形成するというが一つの技術手段として記載されているとするためには、実施例とは別に固有の具体的記述が必要であった。
このような具体的記述ではない審決の摘示する前記〈1〉~〈3〉の記述に基づいた「粉末体形成の態様」を採るという内容は、単に引用例自体の発明原理の適用の及ぶ範囲を示すため技術的に不確定のまま記述されたものといわざるをえない。
引用例においても、そのような自己支持的棒状スート体については、期待され又は希望される技術的事項であろうが、これに特許法29条の2の規定を適用する以上、問題はそれについて技術的検討による裏付けがなされ一つの技術的手段と認められる程度に引用例に実際に記述がされているとみなしうるかということであり、引用例の審決摘示の上記〈1〉~〈3〉の記載はそうではなく、具体化の可否について必要な裏付けを欠き、発明の完成の過程を経ない未完成のままの記述に過ぎないから、引用例が本願発明の上記特徴事項をも記載しているとする審決の認定は誤りである。
(4) 引用例発明が未完成であるという原告の主張は、引用例発明の発明内容が化学的、物理的な性質のものであって、引用例発明の出願当時の周知技術に照らしても、光ファイバの製造法としては、軸方向堆積によるガラス微粒子体形成の手法については、それ自体具体化の可否の検討を必要としたもので、それを経て初めて技術思想となりうるものであるところ、引用例発明の出願当時には、このような検討はなされていなかったということであり、このことは、下記の3点のことからして、事実として裏付けられる。
ア 昭和58年1月1日発行「化学工業」34巻1号(甲第8号証)所載の伊澤達夫「光通信用ファイバの開発」に見られるように、光通信用ファイバの開発に寄与した研究者の述懐が、引用例発明について試行錯誤の実験を経て始めて光ファイバ製造の技術手段であるとの認識をもつことができたことを示していること
イ 引用例出願関係書類中の出願人提出の昭和53年9月9日付け意見書(甲第12号証の4)に見られるように、引用例出願手続中で引用例出願人が引用例発明について周知技術から当然にその具体化が予定されたものでなかったことを主張していること
ウ 昭和52年3月開催の電子通信学会創立60周年記念総合全国大会の講演論文集(甲第10号証)に見られるように、同大会で、引用例発明の具体化の可否の検討結果自体が学術的価値をもって発表されていること。
(5) また、引用例発明が未完成であるという主張は、以下の点からも裏付けられる。
本願発明は、VAD法と呼ばれる二段階法を採用したものである。すなわち、基板から離間した炎中で生成されたスート微粒子が基板上に堆積されて、自己支持的微粒子棒状体を形成する工程と、該棒状体が固化されて泡のないプレフォームを形成し、そこからファイバへ引き伸ばしされる工程とからなるものである。
これに対し、引用例における実施例は、ガラスを直接形成する方法である一段法を採用したものであり、始めから泡のないガラスを堆積する一工程の方法に向けられている。
引用例の実施例の記載自体は具体的な内容であるが、審決摘示の上記記載〈1〉~〈3〉の二段階光ファイバ製造方法とはその手法が全く異なるものであるから、その具体的記載をもって審決摘示の二段階光ファイバ製造方法の具体的記述に代わるものとはいえない。
本願発明の従来技術として本願明細書の第1図又は特開昭49-9523号公報(乙第2号証)に示されるようなガラス粉末体(スート体)による光ファイバ製造方法は、心棒上の周囲に堆積したガラス粉末体の形態をとっているから、審決摘示の記載〈1〉~〈3〉の軸方向堆積による自己支持的ガラス粉末体(スート体)に関する技術的検討事項は、このガラス粉末体の従来技術の具体的結果から明らかといえるものではない。
さらに、引用例の特許請求の範囲に記載のガラス粉末体形成手法については、明細書中にその際の具体的結果を示す記述もなく、実現性に強い疑問がある。すなわち、引用例の特許請求の範囲に記載された手法では、ガラス原料ガス等からガラスを生成する化学反応を基盤表面上で行うために基盤は高温に加熱される。一方、被告も主張するように、ガラス粉末体を堆積させるためには低温の基盤表面が要求される。ガラス粉末体を堆積させることのできるような低温の基盤表面ではガラスを生成する化学反応は生じないと思われる。したがって、このような記載に基づいて引用例のガラス粉末体を発明の態様として認識していたとすることはできない。
以上のように、審決摘示の上記記載〈1〉~〈3〉は、引用例の発明原理の適用できる種々の積層手法を列挙している部分もあるが、この部分の記載は実施例以外の代替的手法を列挙すること以上に具体的ではなく、列挙された種々のガラス積層手法は、もしそれが具体化できるならば、引用例の発明原理である半径方向に組成の異なるガラスを積層する実施例のごとき手法が適用できるとして、その法的権利関係の及ぶ範囲を示そうとしているにすぎないものである。
(6) 審決は、作用効果に関して本願発明と引用例記載の発明に相違がないとするものであるが、引用例に酸水素バーナを用い、粉末体形成の態様をとる場合に固有な具体的結果の記述が一切認められない以上、作用効果について論ずる根拠を欠くものである。
2 以上のとおり、審決は、軸方向堆積によって光ファイバ用自己支持的棒状スート体を形成するという固有の手法に関する技術について、引用例には、それを技術的手段として具体化する可否についての必要な裏付けを欠いた、発明未完成のままの記述があるにすぎないのに、これが完成された発明として記載されているものと誤認したものである から、違法として取り消されるべきである。
第4 被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であり、原告主張の審決取消事由は理由がない。
1 取消事由について
(1) 引用例発明の原理は、回転するガラス基盤上に半径方向に中心からの距離に従って組成の異なるガラス又はスートを同心的に層状に積層させて軸方向に堆積させていき、大きな円柱状のガラス又はスートのブロックを作り、ファイバ製造用素材とすることにあるから、ガラスは基盤を起点に堆積していくに従い円柱状に成長するものであり、それは結局軸方向に成長するものである。
したがって、引用例においても、ガラス体又はスート体は、自己支持的に形成されるように回転部材上に軸方向に収集されるようになっているといえる。
そして、同心的に層状に積層させて軸方向に堆積させるという共通の手段を採るなら、直接ガラス体を形成しようが、一旦スート体を形成し、その後ガラス体を形成しようが、所定の工程を経由してファイバを製造できれば光伝送用ファイバが形成できるのであり、そのブロックがいずれの態様により製造されたかに関わりなく、ファイバにされた場合は光伝送用としての機能を有するものである。
引用例発明においては、上記の同様の手段により、ガラス体が形成される場合もあれば、スート体が形成される場合もあるということになるが、いずれが形成されるかは、それを形成する場所の温度に依存することになる1(乙第1号証参照)。
すなわち、原料ガスをガラス形成成分が溶融する温度(合体温度)以上に保持した雰囲気中で積層体を形成すれば直接ガラス体が形成され、その温度がガラス体が形成される温度より低下するとスート(ガラス煤、ガラス微粒子)体が形成されることになる。
より具体的には、積層体が形成される積層表面の温度が高い場合には、そこに直接ガラス体が積層し、温度が低くなるとスート体が形成される。したがって、酸水素バーナーを使用して積層体を形成する場合には、水素等の燃料をガラスが形成する高温になるような量で供給して、積層体形成表面の温度を高温に保持することにより、直接ガラス体が形成できるものであり、ガラス体ができる温度より下がるとスート体が形成されるものである。
前記第1図の態様において、スート体を形成する多くの先行技術も存在し、ガラス化する温度も知られているのであるから(乙第1号証)、これらについてスート体を形成する範囲の温度になるように特定することは、引用例に記載された範囲内で当業者の適宜なしうるところである。
したがって、引用例における酸水素バーナを使用してスート体を形成する技術は、ガラス体形成技術の実施例の場合と同程度に具体的に記載されているものといえる。
(2) 引用例発明の手続補正に関して述べると、引用例である出願当初明細書が、基盤上に半径方向に屈折率の異なるガラス体を直接形成する場合(一段法)と、一旦スート体を形成しその後ガラス化する場合(二段法)の二態様を包含する発明であったところ、手続補正書を提出し、その発明を後者の場合にのみ限定したものである。
しかし、このことは、原告主張のような、引用例は、本願発明に係る新規な光ファイバの製造法を一つの技術手段として認識できる程度に記載したものといえないという主張と結びつくものではないし、それをうかがわせるような不合理あるいは矛盾はない。
引用例には、棒状ガラス体を形成する場合については、具体的条件を含む実施例が記載されており、ガラス体等の形成反応において、ガラス体が形成されるか、スート体が形成されるかは、それが形成される場所の温度に支配されることが一般に認識されているのであるから、棒状ガラス体を形成する際の実施例に準じてガラス体等が形成される場所の温度を従前から知られている範囲で、スート体が形成されるような低い温度を採択することにより、棒状ガラス体が作る場合と同様に棒状スート体が形成されるのであり、したがって、棒状スート体形成の場合についても、棒状ガラス体形成の実施例の場合と同程度に具体的に記載されているといえる。すなわち、その場合についても、具体化の可否すなわち実現性の検討は充分になされているものである。
(3) また、原告は、引用例発明が未完成であることを裏付ける事実として、ア~ウの3点を挙げているが、引用例発明の完成・未完成は出願明細書の記載に基づいて判断されるものであり、ア~ウの3点はいずれもそのこととは関係ない事項であり、原告の主張は失当である。
(4) さらに、本願発明と引用例発明とは「該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集するようになっており、その基板上には、収集された霧状原料の棒状スート体が、しかも自己支持的に、形成される」点において変わりがないから、両者の作用効果に格別の差異がないことも明らかである。
2 以上のとおり、引用例には、軸方向にガラス原料を堆積して自己支持的棒状スート体を形成するという本願発明の光ファイバの形成方法と同一の方法が開示されているから、審決の判断は正当である。
第5 補助参加人の主張
引用例には、基盤上にガラス粉末体(スート)を堆積させる態様についての実施例はないが、基盤にスートを堆積させ、その後に溶融することは周知技術である。
スート蒸着法が本願出願当時に広く知られていた技術であることは、本願明細書にも記載されている。そして、棒状スート体を形成する技術が周知である以上、光ファイバのためのガラス体を堆積させる方法を示した上で、それがスート体であっても可能であることの開示があれば、当業者は容易にこれを実施することができる。
原告は、引用例における発明が未完成であると主張するが、要するに実施例がないと当業者が実施できないということを問題にしているにすぎない。
しかし、実施例の有無にかかわらず、引用例は周知技術に基づいて実施することができるのであり、引用例において、特許請求の範囲に記載され、かつ、明細書及び図面において充分に開示されていることに疑問の余地はない。
第6 証拠
本件記録中の書証目録の記載を引用する。書証の成立はいずれも当事者間に争いがない。
第7 当裁判所の判断
1 引用例に審決摘示の前記〈1〉~〈3〉が記載されていることは当事者間に争いがなく、引用例(甲第4号証)には、その特許請求の範囲には、「高温で反応してガラス体となり得るガス又は液体又は固体の化合物を高温に加熱された基盤上に送り高温反応させてガラス体又はガラス粉末体の塊りを作り、それを積層させることを特徴とする光伝送用ガラスの製造方法」と記載されており、その発明の詳細な説明には、〈1〉~〈3〉の他に、次の記載があることが認められる。
〈4〉 「本発明は光伝送用ガラスの製造方法に関するもので、その目的は低損失で半径方向に任意の屈折率分布を有し円周及び長さ方向に均一な組成を有し安価な光伝送用フアイバーを作るための素材を得ようとするものである。」(同号証1頁左下欄10~14行)
〈5〉 「本発明は以上の欠点を解消する目的でなされたものであり、その原理は、回転するガラス基板上に半径方向に中心からの距離に従つて組成の異なるガラスを積層させて行き、大きな円柱状のガラスのブロツクを作り、フアイバー製造用素材とすることにある。」(同1頁右下欄12~17行)
〈6〉 「組成の異なるガラスを積層させるには、高温で反応してガラスとなり得るガス混合体を、炎の中に送りこみ反応させてガラスとし、それを積層するか、或は高温で反応してガラスとなり得るガス混合体を高温になつている表面(他の熱源で加熱してもよい)に送り込んで表面で反応させてガラスとし、それを積層していつてもよい。」(同1頁右下欄18行~2頁左上欄5行)
〈7〉 「これら積層時に降下速度は積層速度に一致させる。」(同2頁右上欄11~12行)
〈8〉 「従つて半径方向に任意の屈折率分布を有するガラス塊(3)を作ることが出来る。」(同2頁左下欄11~12行)
〈9〉 「本発明の方法によれば次の利点がある。原料として高純度のガス混合体を用いかつ高温度反応する場所を清浄に保てばよいので低伝送損失のガラス体が出来る。・・・積層速度を一定に保ち積層速度は降下速度に一致させるので長さ方向に均一なものが得られる。・・・降下速度に合わせて外側を加熱して溶融し、所定の速度で延伸すれば所定の径のフアイバーを連続生産が出来る。」(同3頁左上欄1~19行)
2(1) 引用例における上記各記載を検討すると、引用例における光ファイバの製造技術について、以下の事項が開示されているものと認められる。
特許請求の範囲の記載から、ガラス体の塊りを作り、これを積層させて光伝送用ガラスを製造する場合と、ガラス粉末体すなわちスート体の塊りを作り、これを積層させて光伝送用ガラスを製造する場合があることが開示され、発明の詳細な説明中の上記〈2〉「その他上記の説明ではガラス体を作る例を示したが、これはまず始めにガラス粉末体を作り次にこれを適当な雰囲気、加熱温度、時間で焼結してガラス体としてもよい。」の記載によって、ガラス粉末体即ちスート体を形成することが、直接ガラス体を形成することの変形例として、開示されている。
そして、直接ガラス体を形成する技術の一つとして、上記〈1〉、〈6〉の記載及び図面第1図から、高周波プラズマトーチ又は酸水素バーナーの炎中における化学反応を利用してガラス体を形成すること、また、酸水素バーナーを使用する場合は、ガラス体となりうるガス混合体の他に水素等の燃料ガスが供給されており、その燃料ガスが燃焼して発生した水蒸気がガラス形成反応を行うという加水分解反応によりガラス体が形成されることが開示されている。
次に、引用例発明の原理については、上記〈5〉「本発明は以上の欠点を解消する目的でなされたものであり、その原理は、回転するガラス基板上に半径方向に中心からの距離に従つて組成の異なるガラスを積層させて行き、大きな円柱状のガラスのブロツクを作り、フアイバー製造用素材とすることにある。」の記載及び〈7〉、〈8〉の記載に開示されていること、引用例の図面第1図において、酸水素バーナーの炎中で反応して形成されるガラスを、回転するガラス基盤の軸方向から堆積、形成させることが示されていることからすると、ガラスを基盤上に積層していくとその結果円柱状になる、すなわち、ガラスは基盤を起点にして堆積していくに従い円柱状に成長することが認められ、また、円柱状に形成されたものは、その一端部に存在する基盤に保持されているものであり、その他の部分、例えばその反対側端部、あるいは成長方向に沿った部分等にはそれを保持する部材の存在は窺えないから、結局、引用例においても、ガラス体は、自己支持的に形成されるように回転部材上に軸方向に収集されるようになっているものと認められる。
さらに、特開昭49-99709号公報(乙第1号証)には、「火炎加水分解法は、最初は純粋なシリカ粒子を製造する方法として開発されたものである。もし望むならば、次にこれらの粒子を、本質的に完全にSiO2からなる透明なガラスを形成するように、ガラス化してもよい。・・・しかし、ガラス物体を、充分高い温度に保つた閉鎖区域(炉)中で収集工程を行うことにより直接作ることができることが分つている。」(同号証1頁右下欄末行~2頁左上欄19行)との記載があり、これによれば、ガラス体が形成されるかスート体が形成されるかはこれらを積層して堆積、形成させる堆積表面の温度に左右されるということが、引用例の出願当時既に知られていたものと認められる。また、気体混合物を炎の中で加水分解し、ガラス生成前の霧又はスートを形成するスート蒸着法自体は、本願明細書において従来からあるガラスファイバ形成法の一つとして記載され(甲第2号証3欄11~18行)、特開昭49-9523号公報(乙第2号証)の図面第1図にも示されているように、本願出願当時に一般に広く知られていた技術であると認められる。
したがって、引用例に記載された直接ガラス体を形成する方法に代えて、周知の技術を利用して、堆積表面温度を調節し、ガラス粉末体即ちスート体を形成することには、技術的な困難性はないものというべきである。
そして、得られたスート体が、所定の性質を有し、実用性を備えた光伝送用ファイバの製造に供されるものであることは、上記〈4〉、〈5〉及び〈9〉の記載に開示されており、スート体からファイバを得る工程は上記〈3〉の記載に開示されているものと認められる。
したがって、以上の引用例の記載から、引用例には、軸方向堆積によって光ファイバ用自己支持的棒状スート体を形成するという技法が開示されていると認めることができ、また、一つの技術的手段と認められる程度に実際に記述されているとみることができる。
(2) 原告は、引用例は具体化の可否について必要な裏付けを欠くと主張する。
しかし、引用例には、酸水素バーナーを使用して基盤上にガラス粉末体(スート体)を堆積させる態様についての実施例の記載はないものの、上記のように、引用例には、収集された霧状原料の自己支持的棒状スート体の形成について、目的、構成及び効果を伴って総合的に記載されているといえるから、具体化の可否について必要な裏付けを欠いたことにはならない。
そして、ガラス体生成前のスート体を形成する技術が周知である以上、光ファイバのためのガラス体を軸方向に堆積させる方法を具体的に示した上で、それがスート体であっても可能であることの開示があれば、当業者は容易にこれを実施することができるというべきである。
(3) 引用例発明を未完成とすることができないことは、上記のとおり、引用例の記載及び周知技術からいえることであって、原告主張の研究者の述懐、引用例発明の出願過程の経緯及び電子通信学会創立60周年記念総合全国大会における発表の事実は、これを覆すに足りない。
(4) 原告は、本願発明はVAD法と呼ばれる二段階法を採用したものであるのに対し、引用例における実施例はガラスを直接形成する方法である一段階法であって、その手法が全く異なる旨、また、ガラス粉末体を堆積させるためには低温の基盤温度が要求されるところ、ガラス粉末体を堆積させることのできるような低温の基盤表面ではガラスを生成する化学反応は生じないものと思われるから、引用例の特許請求の範囲に記載された方法は、実現性に強い疑問がある旨主張する。
しかし、引用例には、基盤表面上で反応させて直接ガラス体を得る場合について実施例としてきわめて具体的に実現可能に記載されており、変形例としてではあるが引用例に一技術として記載されるバーナー炎中で反応させ、スート体を形成させる場合もこれと同様に実現可能に認識されていたものと考えるべきものであり、実現の可否が不明ということはできない。
また、引用例の特許請求の範囲の記載中「・・・高温に加熱された基盤上に送り高温反応させて」の記載のみによれば、原告主張のように、ガラスを生成する化学反応を基盤表面上で行うように把握できないでもないが、特許請求の範囲には化学反応を基盤表面上で行うことを直接、かつ具体的に記載するところはない。
一方、引用例発明の詳細な説明には、前記〈6〉の記載にみられるように、化学反応が基盤表面上で起こる場合と基盤表面に到達する以前に起こる場合が開示されているのであるから、後者が出願当初から特許請求の範囲から除かれるとするのはきわめて不自然である。
したがって、引用例の特許請求の範囲が、高温基盤表面上で化学反応させるものに限られるとはいえないから、この点に関する原告の主張は理由がない。
(5) 上記のとおり、本願発明と引用例発明とは「該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集するようになっており、その基板上には、収集された霧状原料の棒状スート体が、しかも自己支持的に、形成される」点において変わりがないから、本願発明の作用効果が格別のものであるとすることもできない。
3 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担及び上告のための付加期間の付与について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、158条2項を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 芝田俊文 裁判官押切瞳は転補のため、署名捺印することができない。 裁判長裁判官 牧野利秋)
昭和59年審判第22282号
審決
アメリカ合衆国.10022 ニューヨーク、ニューヨーク、マディソン アヴェニュー550
請求人 アメリカン テレフォンアンドテレグラフ カムパニー
東京都千代田区丸の内3-2-3
富士ビル209号室 岡部国際特許事務所
代理人弁理士 岡部正夫 外3名
昭和51年特許願第125576号出願「光ファイバの形成方法」拒絶査定に対する審判事件について、昭和61年1月14日にした審決に対し、東京高等裁判所において「この審決を取消す」旨の判決(昭和61年(行ケ)第144号―平成2年3月29日、判決言渡―)があったので、さらに審理をし、次のとおり審決する.
結論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
Ⅰ、 本願は、昭和51年10月21日(優先権主張、1975年10月23日、米国)の出願であって、当審において出願公告された(公告日;平成2年12月7日、特公平2-58216号公報)。
そして本願発明の要旨は、明細書(その後提出に係る平成4年1月30日付「手続補正書」を含む)及び図面の記載からみて、その「特許請求の範囲」の欄の第1番目に記載のとおりの
「部材を軸の回りに回転させる工程と;
バーナーの炎中で起きる化学反応によって生成されたガラスからなる霧状原料を該回転している部材に向けて該霧状原料を収集し、該霧状原料からなる体部を形成する工程と;
該収集された霧状原料を固化して無孔質ガラス体を形成する工程と;
該無孔質体から光ファイバを引き抜く工程と;を含む光ファイバの形成方法において、
該バーナーと収集面との間の距離を該収集された該霧状原料の自己支持的棒状スート体が形成されるように維持しながら、該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集することを特徴とする光ファイバの形成方法.」
にあるものと認められる。
Ⅱ、これに対して、特許異議申立人古河電気工業株式会社が提示した甲第1号証(特願昭49-145338号出願の願書に最初に添付した明細書及び図面―特開昭51-71316号公報参照―以下、そこに記載の発明を含め、適宜「引用例」という)には、「光伝送用ガラスの製造方法」に関し、次の1~3の記載が認められる。
1.「前者の一例を第1図に示す。基板(1)を矢印の如く回転しながら所定の速度で降下させる。
そして(B1、B3、B3……)のように複数個の---酸水素バーナー(3)を並べておき、その炎の中央部分に高温反応してガラスとなりうる混合ガス、例えばSi又は他の元素のハロゲン化物、水素化物、有機化合物と酸素のガス混合物をB1、B2……に応じて組成をかえて送り込むと高温反応によりSiO2又は他の酸化物を含有するSiO2のガラスがB1、B2、B3……に応じて出来、それらガラスが基板(1)上に積層しガラス塊(2)となる」(「引用例―公開公報、以下同じ―」第2頁左上欄第6~17行)
2.「その他上記の説明ではガラス体を作る例を示したが、これはまず始めにガラス粉末体を作り次にこれを適当な雰囲気、加熱温度、時間で焼結してガラス体としてもよい。」(第2頁左下欄第13~16行)
3.「このガラス塊(2)は次にさらに高温、例えば2000℃の炉内に入れて溶融延伸してファイバーを作ることが出来る。」(第2頁右上欄第13~15行)
「さらに積層後直紡糸するという形に連続工程でファイバーを作ることが出来る。」(第2頁左下欄第17~18行)
Ⅲ、そこで、以下、本願発明を引用例に記載(上紀「Ⅱ」での摘示部分のほか、第1図等、関連する記載を含む)の技術と対比し、検討する。
1.まず、引用例で上掲「Ⅱの3」の記載事項をも実施する場合には、これは本願発明の場合と同じく「無孔質体から光ファイバを引き抜く工程を含む光ファイバの形成方法」であるに外ならない.
2.次に、前掲「Ⅱの1」に「基板(1)を矢印の如く回転しながら---」とあるとおり、本願発明でいう「部材を軸の回りに回転させる工程」は、引用例でも備えているものである.
3.また、引用例には「その炎の中央部分に高温反応してガラスとなりうる混合ガス、例えば---のガス混合物を---送り込むと高温反応により---ガラスが---出来、それらガラスが基板上に積層しガラス塊(2)となる。」(前掲「Ⅱの1」)とあるから、(1)そのガラスはバーナの炎中で起きる化学反応によって生成されるものであり(この点は、引用例第1頁右下欄第18~末行の記載からも明らかである)、また(2)そのガラスからなる原料に、回転している基板に向けてこれに収集され、ガラス塊となるものである。
そして引用例では、前掲「Ⅱの2」のとおり、(3)このガラス塊(体)は「まず始めにガラス粉末体を作り次に--焼結してガラス体としてもよい。」というのであり、ここでいうその“ガラス粉末体”は、本願発明でいう“該霧状原料からなる体部”であるに外ならないから、引用例でこの(3)の態様を採る場合には、これら(1)~(3)はすなわち本願発明でいう「バーナーの炎中で起きる化学反応によって生成されたガラスからなる霧状原料を該回転している部材に向けて該霧状原料を収集し、該霧状原料からなる体部を形成する工程」及び「該収集された霧状原料を固化して無孔質ガラス体を形成する工程」に相当している.
4.本願発明では、以上のほか、「該バーナーと収集面との間の距離を該収集された該霧状原料の自己支持的棒状スート体が形成されるように維持しながら、該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集することを特徴とする」というものである。
しかし、引用例で前述「3の(3)」の態様を採る場合、前掲「Ⅱの1」(含、第1図)の記載から明らかなとおり、引用例でも、本願発明の場合と同じく、「該霧状原料を該回転部材上に軸方向に収集する」ようになっており、またその基板上には、収集された霧状原料の棒状スート体が、しかも自己支持的に、形成されるものと認められる。そしてこの場合、バーナーと収集面との間の距離をそれが形成されるように維持すべきことは当業者には自明のことであるから、本願発明でいう「該バーナーと収集面との間の距離を該収集された該霧状原料の自己支持的棒状スート体が形成されるように維持しながら、」の点は、引用例でも、その実施に際し、当然に備え又は採られるものと認められる。
5.そしてその作用効果上、本願発明のそれが引用例のそれと異なるものとは認められないから、本願発明は、引用例に記載された発明と同一であるという外はなく(なお、本願明細書中「発明の詳細な説明」の欄及び図面では、屈折率が軸方向に変化した光ファイバにつき云々しているが、本願発明ではこの点を要旨としているのではない)、また、引用例は、本願出願日(第1国出願日)前である昭和49年(1974年)12月18日に出願され、その後に出願公開されたものであり、また本願発明の発明者が引用例の発明者と同一であるとも、本願出願時に本願出願人が引用例の出願人と同一であるとも認められない。
Ⅳ.以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
平成4年6月18日
審判長 特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)
特許庁審判官 (略)
請求人 のため出訴期間として90日を附加する。